2015-11-24

古河暁さん 〔6〕「ゴーゴー アキラフルカワ!」

──いろいろ伺ってきて、新しいこと見たことのないもの・服というとすぐに奇をてらったようなもの(?)を思い浮かべていた私は安直でした…   もっといろんなアプローチがあるってことですね。

古河:   人が着なければ何でもできると思いますけどね。袖なら袖で、襟なら襟で何か面白いことできるかな、と。僕の好きなものをわかってほしいとかそういう思いもありますけど、着る人が自分で選べる喜びとか大切さは持っていて欲しいと思ってます。着る以外の何かも感じてもらえたらなーと。でも不思議なんですけど、日本の人口のまぁ半分くらいは女性だとして、女性ってだけで、みんな同じような考え方になるんですかね?

──え?  何?  それは服のこと?

古河:   服に限らずいろんなことですけど、服なら買う人が自分で選んでこれいいなって思って買ってるのか、流行ってるからっていうので買ってるのかとか…

──服に対する考え方もそれぞれ違うでしょうしねぇ。流行っているものがトニカクスキ!な人もいるでしょうし。古河さんの服を着る人は自分で選んで買って欲しいな、と思っているわけですね。

古河:   そうですね。

──古河さんからこういう人に着て欲しいというのはあるんですか?

古河:   それはないと思いますね。

──サイズも展示会の時にサンプルからその人に合わせて調整したりされてますよね。サイズ展開がないんですか?

古河:   ないですね、そんな何千枚も作るわけではないし、サイズ展開よりもその人に合わせた方がいいかなと思って。着たい服が自分にピッタリだと僕も嬉しいですからね。

──では、次回は刺繍ですね。

古河:   はい。刺繍とファスナーですね。

──あ、そっか。刺繍とファスナー!   いいですね。

古河:   そこにまだあんまりストーリーはないんですけどね。

──ファスナーを開けたらそこにお花のししゅうが、とか。

古河:  ………いいですね。

──すみません。野暮でしたね。

古河:  (笑)

──着る人のことをまず第一に考える古河さんのお話、とても勉強になりました。ありがとうございました。

古河:   なんかあまり言葉がなくて…   すみません。

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(古河暁さん  イソタビュー  了)

古河暁さん〔5〕「古河暁は細部に宿る」

──いつも何か新しいこと今までやったことのないことを服に取り入れたい、とおっしゃっていましたが、新しいテクニックを自分のものにするのに時間がかかるのではありませんか?

古河:   職人技のようなものはやっぱり任せないとだめですね。次は刺繍を使いたいと思っていて、ミシンも見に行ったんですけどね。でも結構高価なものだし、職人さんの技を見なあかんなーということで任せることにしました。

──では、古河さんの手の部分で新しく取り入れようとしていることはありますか?

古河:   やっぱりパターンかな。今回(ミミヤマミシンでの8月の展示会)では結構元型から変えたんですけど。

──元型っていうのは型紙のことですか?

古河:   型紙なんですけど型紙になる前の元型っていちばんシンプルなのがあるんです。それを変えたのが今回初めてやったことかな。今回はより立体的にしようと思ってたから首とか肩の辺りは今までとはかなり変わってると思います。後はカッティングかな。今まで手を加えなかった所を出してみたり、チュールも初めて使いました。

──そうなんですね。ずっと残していくスタイルのものは何かあるんですか?「古河パンツ」みたいなものは…

古河:  (笑)そのブランドの象徴みたいなものですよね?ドレープだったんですけどね。タックとかプリーツとか。そのイメージは強いんじゃないかな。

── 〔4〕「シンプルバランスはナチュラルに」でおっしゃってたようにそれが最近減らしてはるんですよね。

古河:   はい。今回初めてプリーツはなかったんじゃないかな。カチッとさせたいイメージだったんです。立体的でシャンとさせたかった。カジュアルになってきたように感じてたので締めていこうと思って。で、次は刺繍を使いたいです。あとは普段あまり目につかないようなものをメインに使ってみたいな、とか。ファスナーとか具体的なパーツを表に出してみたり…

──開けていいんですか、そのファスナーは…

古河:  (笑)ファスナーを綺麗に使ってみたいです。柔らかく。「あ、ファスナー綺麗…」みたいな感じで作りたいです。

──カタチとして「スカート」とか「シャツ」ってざっくり私は思ってしまってましたけど、部分部分で見ると首とか肩とかウエストとかパーツでできてるんですもんね。そういう小さい部分を変えることでいろいろ冒険もできるってことなんですね。

古河:   できると思います。でもそのためには毎日意識しないと出て来ないと思います。ぼくは多分、服のこと考えてる時間が他の人よりずっと多いのと単純に服が好きだっていうのが仕事つながっているんだと思ってます。

──あと、ちょっとワクワクが好き。

古河:   それは大事ですね。

──ここちょっとツマんだら、こっちキューってなって、ワー!っていう。チョー感覚的…(笑)

古河:  (笑)

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2015-11-13

古河暁さん〔4〕「シンプルバランスはナチュラルに」

(前回の話のまま続き)

古河:   まぁこんな感じなので、毎シーズンのテーマも始まりがわからないんです。どこから始まって出てきたものなのかが…   特に今回だけのことじゃなくて、今まで見たり感じたりしてきたことって言うと、いつもと同じになってしまうし。

──大きなテーマとしてはずっと同じものがあるってことですね。他のブランドの服はあまり見られないんですか?

古河:   見ますよ。部分的な所とか参考にしたりするし、流行色といわれてるものも取り入れますし、そういうのも好きですしね。

──100%古河暁の感覚の服だと、女の子困るかもしれませんもんね。1着の中に古河エッセンスはどれくらい入れるんですか?6割くらいですか?

古河:   いやー、そんなに入ってないと思いますよ。特に最近は削っていくようにしてます。以前は足していく方にこだわっていたけど、今は足してから削っていくようなことをしてます。

──それは単純にデコラティブなもののことですか?

古河:   も、以前はやってましたね。すごいブワーって(笑)

──削っていくようになったのは何故ですか?

古河:   やっぱり人が着るってことを前より考えるようになったからですかね。人に言われたりもしたし。それより元のデザインを忠実に使ったり、分散させたりしながらバランスをとるように心がげています。いろんな人と関わるようになってから単体じゃなくて全部で一つの服って見るようにしています。

──それは一着の服っていうよりは、一つのシーズンでのバランスのことですか?

古河:   そうですね。まとまるようにというか。で、少し変わったものも毎シーズンいくつか作って…   そうじゃないと面白くないですしね。

──意外とそれが1番人気だったり。

古河:     好きな人はおられますね。  それこそ、コムデギャルソンとかがやっておられることとか、すごく面白いと思うけど、僕はもう少しナチュラルなものに興味があります。

──ナチュラルじゃないんですか?コムデギャルソンは、古河さんの中では…

古河:   明確な世界観がありますからねぇ…

──ナチュラルっていうのは服の形態じゃなくて、そういうコンセプトがガチガチではないってことですか?作る人の頭の中がナチュラルとかシンプルってことなのかな。

古河:   そうですね。多分(僕の服も)ナチュラルじゃないんですよ。やっぱり値段もするし、服が好きじゃないと買わないような少し変わったものだし…   でも最近の流行りでもありますね、ナチュラルは。

──ナチュラルとシンプルっていうのはどんな風に違うと思いますか?

古河:   感覚的には同じように思ってますけど、どうなんだろう、難しいな。

──ナチュラルメイクって聞きますけど、シンプルメイクってあんまり聞きませんよね。ナチュラルって自然ってことですよね。シンプルって簡素っていうかモノが少ない感じがしますね。自然に見えるようにバッチリメイクするのがナチュラルメイクなら、シンプルメイクは…

古河:   シンプルメイクは…

──眉毛バッチリであとは一切ノータッチとか。   

古河:(笑)

──で、古河さんの服はシンプル、あれ?どっちでしたっけ、ナチュラル?

古河:   シンプルではないと思います。

──あ、シンプルではない。  まぁ、シンプルとかナチュラルだけで分けられるものでもないでしょうけれど。古河さんのお客さんは年齢層も広いですものね。年齢ではなく何か興味を持たれる要素があるんでしょうね。

古河:   僕も毎回不思議です。服作って、わざわざ見に来てもらって、お金を払って買ってくださることが、毎回信じられないし、恥ずかしくなってしまいます。

──まぁ。恥ずかしいんですか?

古河:   恥ずかしいです。自分の中を見られることだと思うので…   もちろんいい意味で、ですけど。

──嬉し恥ずかしくて、くすぐったい。

古河:    あぁ、それです。くすぐったい。

──いやーん。

古河:(笑)

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古河暁さん〔3〕「食べたいものが決められない」

──最近触りたいものは何かありますか?

古河:   最近は…   霊感が欲しいかな。

──へぇ…

古河:   見えないんでねぇ、見えてみたい。いかんせん、もう全く見えないから。

──訓練でなんとかなるんじゃないんですか?ある程度の素質と。

古河:   無理でしょう。

──そかな。

古河:   いわゆる、出るって言われてる所に行ってみたりとか、事故物件に住んだりしたら見えるんでしょうか…   災いだけ降り掛かるのかもとか(笑)   災いだけ降り掛かっても単なる事故で済んでしまうのかな、とかいろいろ思うんですけど。

──実際行ってみたことはあるんですか?

古河:   ないです。せめぎ合うところです。なんか興味本位で行ったら冒涜するようで…   だから自然に見えたらいいな、と思うんですけどね。

──もう見えてるんじゃないの。

古河:   見えませんよー。何も感じないもん。

──仲良くなりすぎてるとか。

古河:   いやー、ないわー(笑)

──会えたらどうしたいんですか?

古河:   話してみたいし考えてることとか聞きたいです。

──もうなんでも取り込んでみたい古河さん。食べるのも好きですか?

古河:   ありますね。食が細いんですけど…   何でも食べてみたい。

──美味しい不味いじゃなくて。

古河:   美味しくないって言われたら余計に食べて確かめたくなります。衝撃を求めてるのかもしれないです。

──いろんな場所に行って、そこで暮らしている人達の食べてるもの食べるシリーズ、好きですね。

古河:  (笑)ビジュアルが嫌でもとりあえず食べてみたい。

──苦手なビジュアル、あるんですか?

古河:   ベタですけど、ゴキブリは苦手かな…

──わりとベタですね。

古河:   ムカデも…   コンビニでムカデに刺された事があってから苦手です(笑)

──料理はされますか?

古河:   パートナーと住んでいるので一緒にします。

──いろいろ実験料理を一緒に作ったり…

古河:   しないですね。僕は好き嫌いはないですが、パートナーはかなりの偏食家なので普通に食べられる物を作ります。一人の時は、納豆と牛乳とかでも平気です。

──でも納豆を掻き混ぜたお箸をそのまま続きで、インスタントコーヒー混ぜたら、コーヒーがミルクココアのようにまろやかになったという話は聞いたことがあります。

古河:   そういうの僕も見つけたいです(笑)   まぁあんまり美味しい食べ物に執着はないかな。美味しいとか高価なもの食べて満足とかより面白い方がいいです。

──なんせ食が細いから。食べられる量が決まってるから考えて食べないとねぇ。ペース配分とかも大変ですよ。

古河:   そうなんです、選択肢がありすぎて決められないんです、ほんとに。

──おかずが選べる定食屋さんにバイキング。

古河:   困ります。

──種類が豊富なパン屋さん。

古河:   甘いのも辛いのもどっちも食べたい、さらに甘いのの種類も辛いのの種類もこんなにあって…   あぁもうやっとなんとか決めたら、次は飲みもので迷う。パートナーに「すごい時間かかるー」って言われます(笑)

 ──食べたい物も行きたい所も触りたいものも同じように欲求として古河さんの眼の前にあるんですね。いろんなものの良い悪い、キレイキタナイ、清濁含めて、見たい感じたいっていうのを服でやってみようと思っておられるのかな、というのはなんとなくわかってきました(笑)

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古河暁さん〔2〕「古河 暁の女の勘」

──今は女性の服だけを作っておられますが、古河さんがおっしゃる「服」っていうのは、もう女性の服だけのことなんですか?

古河:   そうですね、以前に較べると、服っぽくはなってきたと思います。アーティストじゃないなっていうのは思います。最終的に人が着るものなので、着る人のことをまず第一に考えないとダメだから。アートとファッションって交わりそうで交わらないようになってるのがいいかなぁ、と僕は思っていて。でも平行線でもないんですけど。ある程度制約のある中で作っていきたいな、と。着心地とか考えるとここにこの生地使ったらあかんな、とかそういうことは考えますからねぇ。でも、何かしら新しいことしてないと、自分で飽きちゃって続けられないです。

──でももう、「服」でっていうのが決まっていて。男性用の服は作らないんですか?

古河:    作ろうと考えたことないですね。自分が着る用に作ったことはあるんですけど、人には作ったことないです。もう作ってないな(自分のも)。女性の身体の方が面白いというか興味がありますね。

──古河さんの作る「女性の服」の女性って何かしらイメージはあるんですか?

古河:   うーん、どうでしょう。なんでしょう。女の人ねぇ…(笑)

──服に置き換えなくてもいいんですけど、例えば海と山だったらどっちが女性とか…

古河:  (笑)すごく自由だと思いますけどね。女性って。男性よりも柔軟で強いイメージかな。なんとなくパーフェクトな感じがします。

──へぇ。だからいろんなイメージが持てるんでしょうかね。

古河:   でも、強くあって欲しいとか自由であって欲しいっていう願望もあるかな。ちゃんと自分で選んで僕の服を着て欲しいっていう思いもあるし。単純に女性の身体が立体的で綺麗だと思うからそれを見せたいとか…   でも強いイメージが大きいかな。柔軟さも含めて強い弓みたいに思います。

──男性にはそういうの無いよなーって思われてるんですか?

古河:   そんなん言ったらだめですね。僕、男なのに。いや、好きなんですよ男性も。イケメンは…(笑)

──高校球児に恋してましたよね。(注: 録音時は9月で高校野球熱がまだ冷めやらぬ頃でした)

古河:   そうなんですよねー❤    エラそうな人が嫌なんです、単純に。女性から産まれた事を忘れてる男とか。そういう人、結構多いから。

──私、忘れてたかも。すみません。そんな古河さんは自分の中にある女性性みたいなのは感じるところありますか?

古河:   えー、女性性?   僕の中の…   えー、あるかなぁ、難しいなぁ……………(しばし沈黙)

 ──私の中では古河さんはすごく感覚的な人だなと思うので、そういうところとか…でもなんかどちらでも無いような感じもありますね。性別をあまり感じさせないというか、不思議な存在感ですね。

古河:   ほとんど、勘   ですね(笑)

──ちょっと話が飛びますけど、ご実家はわりと田舎の方で小さい時から鹿猟なんかもされてて、自然の中でスクスクと育たれたとか…そういうのも多少関係あるのでしょうかね?

古河:   僕はできないけど、鹿を獲ってさばいて食べてましたからね。あと土に埋めて骨だけになっていく様子とかも見てましたね。

──「強い」とか「しなやか」とかも、そういうのを知ってると知らないでは、言葉にもたせるイメージも違いますね、きっと。私は小さい時に鹿をさばくのは見てないです…

古河:   一般的に残酷だと感じられたりしてるものの中にも、綺麗なものがチラッとあるんじゃないかとは思ってます。とりあえず、食べてみて決める、みたいなとこはあるから…いろんなものに興味はあるんですけど、ある程度選別しないと、もうわぁぁってなっちゃうんで(笑)

 ──興味のあるいろんなことって、例えば?

古河:   とりあえず見たことないものとか触ったことないものは何でも。触りたいです。

 ──あぁ、触りたいのね。

古河:   でもまぁ実際そんな機会もしょっちゅうないし、本見たり写真見たりするのは好きです。

 ──ページを触って

古河:  (笑)いろんな所行きたいし、何でもしたいです。その中のファッションなんですよね。

──そういう興味あるいろんなことをファッションに落とし込むってことですか?

古河:   そうですね、ファッションをできてて良かったです。飽きないし。

──服って擬態みたいなところもあるものね。着ることで何かになるとか、何処かへ行くこともできますね。

古河:   僕は作ってる方だから年中旅してる感じです。だからやっていることに関しては幸せだと思っています。他には何にもできないので周りからみたらどう思われてるかわからないですけど。気にならないですけどね。

──いやー、周りからどう思われてるかは、もう考えてもわからないから…

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2015-11-01

古河暁さん〔1〕「アタマがクニャっとする」



古河暁     
兵庫県生まれ。アパレル数社を経て、2004年にセールス&デザインSEENUS CASTAを設立。
女性をテーマにしたブランド AKIRA FURUKAWAを2013年に始める。
www.akirafurukawa.com

2015年の1月と8月に、ミミヤマミシンで展示会をしてくださった古河暁さん。展示期間中にしていた雑談のことがなんとなく引っ掛かっていたので、そのことから質問を始めてお仕事についてのことなどいろいろ聞いてみました。かなり長くなったので、何回かにわけて載せていきます。(写真の提供はすべて古河さんです)

text_Tomoko Soda

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〔 1 〕   「アタマがクニャっとする」

──1月の展示会で雑談してた時に古河さんが、普段服を作っている時と数字を扱ってるときのアタマは違っていて、「脳がクニャーってなる。」ってゆってらして、で、あの時一緒に話してた誰もその感じをわからなかったんですけど(笑)なんだこの人面白いなって思ったのと、あと、「お母さんのおにぎりは手を洗わないで作ってほしい!」と強く言っておられたのが印象的でした。

古河:  (笑)潔癖ではないです。

──なんとなくその辺をとっかかりにして(?)、古河さんのことをいろいろ聞きたいのですが、「アタマがクニャってなる」についてもう一度説明してください。

古河:   みんなそうなんだと思ったんですけど…   デザインしてたり服を作っている時とお金の計算してる時とか、あと、パターン引いてる時と縫ってる時も違う時あるんですけど、なんか上手に切り替わらずにそっち行ってるからか、切り替わる途中なのか分からないんですけど、それこそ、やっぱり…   クニャーっとしか言えないんですけど、そうなるんです。

──へぇぇ…   ”痛い”とかとも違うんですか?

古河:   あ、じゃ、ないです。なんか感じるものです。

──へぇぇ…   どんなだろ、脳みそが流れ出るようなイメージかな…

古河:   違うことをしようとしてるんだと思うんですけどデザインも続けるためのお金のこととかもひとつのことだとは考えてるんですけど、苦手だからかなぁ。

──キューってする感じですか?

古河:   あぁ、それに近いかもしれないです。なんかクニャーってまわるんです。

──そか、脳の使うところがガッシャンてまわっていく感じ?

古河:   そうそう、なんか入れ替わろうとしてるのがわかるんです。

──それ、いいですね。その気になり易くて。ガッシャン「はい、今からお金計算のアタマー」

古河:  (笑)ずっとパターン引いて縫ってサンプル上がってきて…   っていう一連の流れでいたいんですけど、そこからお金のこととかってちょっと離れてしまって嫌なんです。リズム狂うし。クルクル回っときたいのに寄り道しないといけないから。

──そう思ってるからでしょうかね。

古河:   だとおもいます。だからみんな同じようにあるんだろうなと思ったんですけど…

──ストレスたまらないっていうのも以前に言っておられたとおもうんですけど、苦手なこととか嫌だなーって思うんじゃなくて、「あー、今、脳回ってるわー。次行くんやなー。」って思うと、いいね…。

古河:   まぁ、あんまり他の人みたいにいろんなこといっぱい考えてないんだと思うんですけど。

──そんな感じで服を作っておられて、そういった個人的な感覚がフルカワアキラの服に出てくることってありますか?例えば、この脳のクニャっとした感じのフリルとか…

古河:  (笑)どう思ってこの服を作っているのかっていうのがよく聞かれるんですが、毎回上手く言えなくて辛いんですけど…   コンセプトも後付けが多くて。明確に何から出てきたのかが分からないんです。パターンを引いたり縫ったりしている時に、ポンっと出てくるというか…   今回の(2015年8月のミミヤマミシンでの展示会)、”バレリーノ”っていうテーマも、僕が好きなダンサーがいて、その人たちのことをいつかしたいなと思っていて。ヴァーツラフ・ニジンスキーっていうダンサーと、セルゲイ・ディアギレフ(ロシアバレエ団の創設者)って人がいて、どちらも男性なんですが恋人同士で、結局別れてしまうんですが、その2人のことを単純に服に込めたいな、と思ったんですけど、毎回上手くそのストーリーっていうものが作れないです。

──でも毎回何かしらテーマはもたせないといけないんですね。

古河:   そうですね。最終的にはまとまるんですけど、最初はほんとに何もなくて手探り状態です。使ったことのない素材とか形とかカッティングとかは絶えず意識してるんですけどね。

──じゃぁ、毎回題材を探すというよりは、服になるかならないかは別として、古河さんの中で気になるものとかずっと引っかかってたこととかがあって、それを引っ張り出してくるという感じですか?

古河:   そうですね。その引っかかりを見つけてきてテーマを持たすのが、大変です。

──でもいつもひとつのシーズンが終わるとすぐ次のもの作りたいっておっしゃってるから、きっと素材になるようなものはたくさん持っておられるんでしょうね。

古河:   そうですね、頭のなかにストックはされてると思いますけどね。自覚はないんですが…   最初に絵を描かないので、生地とか見た時に次はこれ使おうとか覚えといて。

──メモとかもしないんですか?

古河:   しないですね。パターン引くのが初めて描くときかな。

──じゃぁ、そこまで来たらもうスムーズに。

古河:   それがそうでもなくてねー。その通りにならないし。ずーっと同時進行って感じです。色のこととか、縫いながらまたパターンのこと考えたり…

──あぁ、そうやって作りながら服のこと更にグルグルと考えてるから、またあの話ですけどお金のことしないといけない時は、クニャーっと…

古河:  (笑)そうですね。急にストップさせてるからかもしれないですね。ほんとにずーっと服のこと考えてるから…

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