──何人かで一つのものを作るとか、自分の作品制作に人の手を借りることはありますか?
船川: いくつかあります。わかりやすいのだと、絵描きの友人と特に美術には関わっていない友人と僕の3人でやったのがあります。3人の共通点は相撲好きということで、会うといつも相撲の話してるんですが、ある時朝までずっと相撲の話してて、でモーニング行って相撲の話して、5軒モーニングのハシゴしたんです。友人の家が新世界(※2)にあって昼過ぎてもずっとモーニングやってるんですよ。5軒目の頃には3時くらいになってて。その時に自分がずっとやりたかったこととか、3人でインドとか旅行したいって言ってたこととかが一緒になっていったんです。 僕が以前インドに行った時にクリケットの試合を観たんですけどルールが全くわからなくて。でもまぁ観てたんですがあまりにもわからないので、自分で勝手に作ったことに当てはめて、そういう事をしているって風に観ようと思ったら大喜利みたいですごく楽しかったんです。で、それを逆にしてある程度ポピュラーな相撲を全然よくわからないものにして、その間違った相撲をインドにしに行こうという事になったんです。で、その3人でインドの川辺の街に1ヶ月居て毎日2回相撲をとりつづけるということをしに行きました。
──間違った相撲の"間違った"はどんな風に間違ったんですか?
船川: 3人でどう間違えるかって話はしてたんですけど、あまり何も考えずに行って最初に土俵みたいなものを作ってたら、(地元の人が)「ここは牛の通り道だからこうした方がいい」とか、衣装も仰々しく歌舞伎みたいなのにしようと思ってたんですけど、(地元の人が)「腰の辺りに太陽の飾りを付けるのは失礼だからこうしろ」とか(地元の人が)「こうしろ」とか「こうしないとダメだ」とか「おまえたちの相撲なんだったら」みたいにどんどん口やかましく言ってきてくれるんでどんどん間違えていって…。
──わざわざ考えて間違えなくても勝手に間違えられた。
船川: そうそう。最終的に3人ともケガしまくってて最後の1週間はほぼ尻相撲だったんですけど、その間に子供の土産物屋が「お土産売りたいねんけど…」って相談してくるから、「じゃぁ合間に売ったら?」みたいになってて。
──観客がいるわけですか?
船川: そうです。毎日やってたら人が集まってくるようになってて、お土産売りたいとか、牛を連れて来たいとかいろんな人が出てきてそういうのも含めての"相撲"なってて。それもちゃんと広められたなぁって思ったのはあと5日で終わりくらいの時に夜散歩してたら街の青年たちが、相撲の真似してて、牛の通る道とかもじぶんで作ってやってて。「わ!やってはる」って。
──すごい!流行ってるかも! それはずっと3人でやってたんですか?
船川: 最初は3人でやってたけどやりたいって人が出てくるようになって、「じゃぁ6人でやろっか」みたいなのもありました。
──6人で一気にとるの?
船川: そうです。でもずっと人の股の下をくぐってる人とか、「この人何してんねんやろな」っていうことがしょっちゅうあるんですけど、なんとなく勝者が決まって祝詞みたいなのもあげてました。
──行く国で全然違う間違った相撲になりそう。
船川: そうですよね。アフリカとか行きたいです。
──共通のわからなさをある程度共有している3人だと、そうやってどんどん膨らんで行きそうですね。でも例えば(制作を)手伝ってくれる学生とか全く知らない一般の人なんかに船川さんが自分の作品について説明しなくてはならない時なんかは、そういったわからなさをどんな風に伝えるんでしょうか?
船川: うーん、どうだろ…ちょっとわからないけど、仲良くなるとか…
──「相撲でもとろかー」とか。
船川: (笑)自分のやる事の場合は相手とある程度の時間が重なってないとやりにくいかなぁ。
──ことばで説明するのではなくて…どうすれば仲良くなれますか?
船川: なるたけ同じ時間を過ごすとか…仲良くなれたなって思える瞬間がいろいろあると思うんですけど、お互いの恥ずかしいところを見せ合えたとか。でもどうだろう…(よく考えて長い沈黙)
この人はどういう病気持ってるのかなっていうのは見ながら思ってしゃべることは多いです。しぐさとか見て、こんな病気を持ってるんだと思って好きになってその病気をもっと見せてもらえるように働きかけるっていうか。
──病気って身体の病気?心臓が弱いとか。それともその人特有の偏りみたいなもののこと?
船川: どっちもですね。
──そういうのは何から感じとれるの?しぐさって言ってたけど…
船川: そんな気がするんです。僕が喘息もちなんでその喘息もち特有の面持ちというか趣きがあるような気がするんで。あと喘息もちの気分とかすごい面白い。同じ喘息もちの人と話してたりするとよくわからないけど通じる感じとか、そういうのがお互い見えると仲良くなれたっていうか、どこに根を張ってるのかわかると相手をちゃんと見れるようになって、引き出せるようになって…っていうのはあると思います。でもちゃんと伝えないといけない時とかどうだろう…
──そんな風にじっくり時間をかけることができない場合は、ある程度は言葉も必要だと思うんですが、船川さんならどんな言葉を使うんでしょう。当然そこで「あなた身体のどこ悪いんですか?」だと全く違うしねぇ…
船川: (笑)(一緒に制作してもらう場合は)「あんまりキレイなものとか想像しないでください」とか「カタチになっているものとか想像しないでください」っていうようなことは言ったことがあるかもしれないです。さっきも話したように象徴付けるのが苦手でそういう向きにはいきたくないので、決まったカタチがあるようなものにはならないと前もって言って、スタートしていく時に何か面白い瞬間があれば教えてくださいとか、自分が相手に仕掛けたことに対してレスポンスがあればあぁこの人はこんな反応するんだなって思うとそこから組み立てていけるというような感じですかね。
──やっぱり、いいおじいちゃんだなぁ。
船川: やっぱ、じいちゃんですか(笑)
──人と一緒に作るのは好きですか?
船川: そうですね。最近まで好きだったんですけど、今はまた1人の方がいいなと思ってきてそっちが多くなってきてます。