──美術に興味を持ったのはいつ頃なんですか?
船川: もともと絵を描くのが好きで高校生の時美術部に入ったんですが、先生が面白くて仲良くなっていろんなことを教えてもらっているうちに、この体でやっていい事がたくさんあるんだなと思って。それで高校生の時も石を集めてたんですけど、その石を壁が埋まるまでずっと投げてそれをビデオで撮ったりしてました。あ、でも今思い出したんですけど、一番最初にした清々しい経験を…。
僕、九州の生まれで熊本に住んでた時、家の裏に藁がたくさん積んであって、記憶が曖昧なんですがずっと地平線の方まで藁ばっかりっていうような広大な所で、その藁でテレビとかテーブル作って友達と秘密基地を作ってたんです。よく台風が来るんですけど、そうなると半ノラの猫とか家の中に入れて窓とか板打ち付けて一日中台風過ぎるのを待つんです。で、過ぎて外出ると藁の基地が何にも無くなってるんですよね。それもすごく清々しいなーって思ってたっていうのを今思い出しました。幼稚園くらいの時かな。
──わー、無くなってる!ってガッカリするよりはスッキリ。
船川: そうですね、おぉ、なんかすごいことになってる!みたいな。
──自分で作って自分で壊すんじゃなくて、何か別の出来事がやってきて無くなっていったというような。
船川: そうそう、人を超えた何かすごいデカい力があるなって感じがあったのかもしれないです。
──たまたまそこにあっただけで、わざわざ壊れやすいもので作ったというのでもないもんね。
船川: そうですね。壊したいわけでもないので。
──それを清々しいっていうのが、なかなか…おじいちゃんやね。
船川: (笑)そうかもしんない。そのエピソードから考えたわけじゃないけど、何かする時に考えてることで、どこから始まったかよくわからないある出来事があって、そこに没頭していく感じが好きなんだと思う。一つの物語みたいに地続きに時間が流れていって結果こうなったからこれが大事なんだよってことより、バンっと何かが立ち上がってきてそれが大事って思う感覚の方が好きなんだと思います。
──じゃぁ、この間のライブでやってたのは、そういうことを全部自分で再現しているっていう感じもあるのかな。最初の状況もある程度自分で作って…
船川: うんうん
──で、飽きて(笑)。そういう状況…環境…が自分の中でコンパクトに起こっていると。
船川: そうなんだと思います。それがうまくいくと嬉しくて清々しくなるんだろうな。
──ミミヤマでのライブの時も5組くらい出演されてて、その中に船川さんがピョンといるとみんな、ポカーン みたいな感じで。
船川: はははは
──「へぇー…え?」ってなってましたね。で、何かすごく"わからない"をやってる人だなぁと思って見てました。私の中で"わからないをやっているよく知らない人"なのでぜひインタビューしたいと思った次第です。
船川: すごいですね、それ。
──船川さんは自分の知らないとかわからない事に寛容ですか?
船川: あ、うん、そうだと思います。
──今まで話してくださったエピソードから言うと、「なんでこうなってしまったんだー」というか原因について考えることはありますか?
船川: もちろんあります。けど、あーどうかなぁ…あんまり考えないかな。(作品に関しては)ある程度わからなくなるような狙いも自分でつけてたりもするので、「よくわからんことになった!」って嬉しくなるかなぁ。
──その、わからなさとか偶然が起こるように、どのくらいというか何を作るんですか?
船川: それはすごく単純なことで、象徴的なものが読み込めるような要素があれば、それは取り除いてモノだけがただありますよって状態でスタートすることです。
──象徴的というのは例えば…
船川: (前回のライブだと)あるものを立てようとしているけど、それが別のものによって壊され続けて立ちませんってなると、なんとなくそういう象徴的なものを思い浮かべるかも知れないけど、ただ回ってるものと丸い筒とか薄い板がある状態をそのまま伝えるために、なるたけそういうことを読み込めないようにしようとします。
──モノがそれぞれ何かを思い起こさせるのではなくて、モーターはモーターで仕事してる様子を淡々と見せるというような。モーターの先に何か付けてありましたよね。
船川: 家で試してたんですけど、モーターの先にこれくらいの重さのものを付けたらヘンな動きするなってわかって。で、適当な重さのものを付けてたんです。
〔3〕「間違えてわからない いいおじいちゃん 」に続きます。
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